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エピソードF-1.00

 全てを押しつぶす翡翠の大光を、少年は凝視した。
 ほんの一瞬の悪夢のほうがよかった。
太古から続く「北の大国」と「南の諸国」による抗争は拡大の一途をたどり、果てには世界を巻き込む一大戦争へと発展していった。
全面対決が避けられなくなった両陣営は、北の大地を舞台に衝突を繰り返し始める。
 その中を彼らは『蒼』の一文字を旗に標し、戦場を遊撃していた。
あらゆる難敵を打ち砕き、常勝を約束された部隊、『蒼』。
 その最後はあっけないものだった。
敵方の総大将「月の女神」と、蒼の部隊総長「蒼き勇者」の相打ち。
そして世界は翡翠の光に包まれ----ありとあらゆる文明を押し潰されながらも----新たな時代の幕開けを祝った。
 世界が歓喜する中、まだ少年だった彼は大事な友人を二人亡くし、慟哭していた。
蒼き勇者の背を守れる者。月の女神の愛を知る者。
 彼の名は、ファイディ・クロノ。
人であり、獣である。
  ※※※
 ……ディ…。」
ファイディは誰かに揺り動かされている事を、夢現の間で感じ取っていた。
だが、前日に近隣の村まで歩いていった疲れが出ているのか、中々現に戻ることが出来ないでいた。
陽蘭 「ファイディ!!」
彼は同居人に自身の名を呼ばれている事にようやく気がついた。
ファイディ 「…んん?陽蘭、どうかしたか?」
寝ぼけ眼のまま、ファイディは自分の顔を覗き込む同居人の頬に手を添えた。
陽蘭 「ずっとうなされていたから…。」
ファイディ 「そうか…。昨日のせいだな、そりゃぁ…。」
陽蘭 「…なぁに?」
ファイディ 「昨日、広場で『自分は蒼の部隊の生き残りだ』っていってる奴をノした。おかげで今日の夢見心地は最悪だ。」
彼は先日、食料品などを買出しに村のマーケットに顔を出した際、広場の中央で大法螺を吹き村人たちから金を巻き上げていた一味と大乱闘を起こし、勝利していたのだ。
結果、4年前の忘れられないあの日を夢で見てしまったというわけだった。
のっそりと上体をベッドから起こし、ファイディは顔を両手で洗う仕草をした。
陽蘭 「あら、今日は雨かしら?」
ファイディ 「ッチ、バカ。オレは猫か。」
ファイディが両手で顔を洗う仕草をすると必ず雨が降るな。そう友人に言われたのを彼はふと思い出した。
彼は立ち上がり、手近な窓から外を仰ぎ見た。
大草原に立つ一軒家。
その窓から見える、地平線の先まで牧草地のここが、4年前までは大砂漠地帯だったとは誰も信じはしないだろう。
だが事実、ここは4年前の終戦直前まで砂漠であった。
「月の女神」と、「蒼き勇者」の相打ちの際に発生した翡翠色の光が世界の姿を一変させた。
その確固たる証拠が、青年の眼のまえに広がっていた。
 遠くに、黒い雲の塊があるのを彼は目聡く見つけていた。
ファイディ 「…顔占い、また当たったなぁ……。」
ファイディは大きくため息をつくと、白いシャツを引っつかみ、1階へと続く階段に足をかけた。
エピソードF-1.00、了。

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